2015-08-31

「とこしえ」について 高田うの

「ムクドリの会」のジンに高田うのさんが素敵なレビューを書いてくれました!

「とこしえ」について

私のお父さんが、細海魚さんという人の『とこしえ』のレコードを買ったのは、もう随分前です。

お父さんは、お母さんのスマホと私の iPod Touch にそれを入れてくれました。私はお願いした訳でもないのに、なんで勝手に入れるのだろうと思いました。
あの頃の私はまだお母さんと一緒にベッドで寝ていて、小さなベッドでぎゅうぎゅうにくっ付いて『とこしえ』を聴いていました。最初はなんだか不思議な音楽だなと、思っていました。
でも、段々と冬が近づくにつれ寒くなり、冷んやりした部屋に合っている音楽だな、とも思っていました。

毎朝5時過ぎから動き回るお母さんの足音は壁の向こうでバタバタとうるさいけど、一通りの家事が終わるのはすぐわかりました。魚さんの音楽が始まって、コーヒーの香りがするからです。朝早く、壁の向こう側から小さく聴こえてくる『とこしえ』は気持ちよかったです。
『とこしえ』は冷んやりしているけど、少し暖かい感じもします。
冬から春の感じもします。
おまけで付いていた葉書がとっても素敵でした。『とこしえ』を聴きながら葉書をボーッと見ていると、ほんわかした気持ちになります。そして、眠くなります。ベッドの中で聴いていたからだと思います。
良い事があった日も、悪い事があった日も、魚さんの音楽でよく眠れました。お母さんに声をかけて先にベッドに入り、iPod touch の再生ボタンを押すと、布団が暖まった頃お母さんが来ます。「よいしょ」って、布団をめくって冷たい足を私に押し付けて来るのでその度に私はキャーキャー騒いでいました。
普段の私はアニソンばかり聴いています。お友達には魚さんの事を知っている人はいません。だからといって教えてあげたくもありません。
『とこしえ』は特別な音楽です。私とお母さんがまだ一緒に寝ていた頃の二人の素敵な子守唄です。
最後に。私は目が離れているのでよく魚顔と言われます。まぁ、そこはちょっと関係ないかもしれないけど。

高田うの

ムクドリ vol.3 より
http://eternal59thsecond.wix.com/fobld




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